呼ばれたような気がして、 近所の宇佐八幡神社に。いつもするように、樹齢八百 年の大楠に手を触れた瞬間、ひゅるる るんと、耳を撫でるように、後ろ から風が吹いた。気持ちよくて、 何度か試したけど、一度きりだった。風 はないけど、足下にはうつほがあ る。ああ、この穴から吹き上がったのだなと 、直感した。それから耳の後ろに 、小さな辻風(つむじ風)が、いつまでも 残っているような感じがした。こ の鎮守の森は、本人にしかわから ないような霊験を通して、なにか 大切なことを伝えようとする。
今朝、森のなかで、ふとゴッホを 想った。あの小さな辻風が、 ひゅるるるんと螺旋を描いて、星 月夜のように、耳の後ろで回転し ていた。渦に巻きこまれてはいけ ないけれど、そばにいるなら心強 い。いつか自然に帰るその日まで 、いろんな風に吹かれながら、自 分の歩幅で歩けばいいのだと思う 。
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