2019/07/05

蘇る樹海

和紙を使った印刷の実験。顔料インクとの相性はすごくいい。和紙にもたくさん種類があって、それぞれ個性が違うので、絵によってどの紙が合うのか模索中。うまくできたら購入できるようにしようかと思う。どんどんやれって、なにかに背中押されてる感じ。
 
 
画集を購入してくれた方が、おまけに送ったポストカードを祠や自作の額箱に飾ってくれていたのがプリント販売のきっかけだった。友達にもポストカードを送りたいから、もう一冊買おうとしたので、いやいや、それだったらもっとちゃんとした額装できるものを作るからと約束した。
 
そもそも本人も忘れかけていた、十何年も前の画集に問い合わせがあるのも不思議だった。一度死んだあの本が蘇るなら、樹海シリーズも蘇えらせてみたいと思った。アウトドア用カメラしか持ってないけど、幸い樹海は撮影してもらっていたデータがあった。なにもかも、今この瞬間のために揃っていた。

プロが使うような高性能、高画質プリンターではないので失敗が多く、一枚一枚『頑張れ!』と祈るような気持ちで見守ってる。たぶんここで作品に念(想い)が入ってる。外注という選択肢もあったのだけど、自分で失敗したり感動したり、試行錯誤したかった。本人が感動しないと、想いは人に伝わらない。
 
 
上手く刷れた作品の上に、有害なベンゼン、トルエン、キシレンを含まないニスを薄く噴射して乾かし、その作業を何回も重ねていく。この工程を加えることで、高級プリンターのクオリティに引けを取らない作品に仕上げる。写真には映らないような、ニスの強弱を微妙に調整して、森の中に艶を与える。

陽光には雲流という薄い和紙を使った。雲が流れるような楮(こうぞ)の繊維が、陽光の下で精霊のように自由に泳ぎまわっている。組み合わせの妙だと思う。この絵にはこの和紙しかなかった。絵がカミを呼んだ。
 

価格は阿波紙出力サービスを参考にした。A4出力1600円+紙代と送料と諸経費400円の一枚2000円。プリンターの性能の違いは手作業によってカバー。作品料は含まない。なお陽光は失敗が多く、数が少ないのでセットのみの販売とした。
 
 
ギャラリーで額入りで販売すると、額装代、場所代、広告費、人件費などが上乗せされて最低でも0がひとつ増える。知名度が上乗せされると、00か000がつく。このプリント作品の価値は±0に設定している。作品のほんとうの価値は、見ている人が決める。
 
浮世絵などに馴染み深い日本人には、このサイズが気持ちいい感じがする。印刷だけど、扉(gate)の役目は果たせると自負している。本来芸術は万人に開かれた扉、自分の作品だと思って育ててくれる人のみ、届けたかった。
 
プリントがすこしまとまってきたから、そろそろ誰でも購入できるようにしようかと、先週の土日にゆっくり考えて注文してくれればいいなというくらいの気持ちで、金曜の朝にささっとサイト作って午後にアップしたら、注文が一度に集中して、その日のうちに在庫がなくなってびっくりした。
 
嬉しいんだけど、混乱してた。自分の力じゃないなあと思った。作家さんに聞いてみたら、みんな一緒に作ってる気持ちになってるんだよ。と言われてハッとした。そんなに意識してるつもりないけど、制作で感じたことは(自分事じゃない気がして)その都度SNSに書いてしまうので、結果ずっとプロモーションになってたんだなと思った。
 
試行錯誤したプリントを、高価ではなくても、綺麗に丁寧に額装すると、絵も喜んでくれた。森は神気を帯び、陽光には精霊が舞った。大きな油絵は小さな浮世絵として新たなる質感で蘇った。なにより本人が感動してる。この想いが波動になって、集合無意識に伝わったんだなあと思う。
 
絵を描かなくても、人は死なない。農家や漁師さんの仕事とは違うから。でも人間はそれだけでは、心が枯れてしまう。だから心に栄養を与えるために、みな作り続ける。心が枯れてしまわないように、心が元気(±0)になりますように。
 
 
樹海シリーズ
 
(後日再販します)
 
 
 

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