2018/06/08

ままならないこと

大きな絵を描きたくなって、自作でパネルを作って、部屋も少し改装して、何週間もかけて描いていたけれど、途中で失敗していることに気がついて、今日、バラして破棄した。もっと早く気づけばいいのにと思うんだけど、やって(描いて)みないとわからないからしかたない。たぶん他の人が見たら、なにがよくて、なにが失敗なのかわからないだろうと思う。でも本人は一番よくわかってる。努力したからって、報われるような世界じゃないことを。

どんな仕事でもそうだと思うけど、自分に嘘をついたまま作業を進めていると、世界が歪んでくる。チャレンジは必要だけど、歪んだままで山頂を目指していると、魂が遭難してしまう。周りの人は褒めてくれても、本人だけはわかってる。数えきれない失敗や、意味の見えない徒労だけが、魂を救済する。

夕暮れ、気分を入れ変えて、真っ白な気持ちで、久しぶりに明王寺の桜を見に行ったら、おみくじの言葉が景色にシンクロしていて、時間がふっと消えたような、なんとも言えない気持ちになった。自然がいつも優しいのは、変わらないから。ただただそこにある永遠(もののあはれ)を、感じさせてくれるから。

桜花 盛りはすぎて
ふりそそぐ 雨にちりゆく
夕暮れの庭

最近、展覧会の構想がふいに浮かんで、自分でも意外だけど、突き動かされるものがあった。でもまだボンヤリしていたので、いろんな人に意見を聞いてみた。すると自分の内側におもしろい反応があって、相談すればするほど、他の人の意見なんて聞くな、自分のこだわりを貫けと思うようになった。人の意見は、内なる声を反響する。

ほとんど自分でもよくわからないうちに、なにかに突き動かされるとき、背中を押しているのが、自己中心的なものなのか、それとも自分を超えたものなのか、時間をかけて注視する必要がある。クライアントが精霊(it)なら、失敗や徒労や恥や無意味のあとに、とても爽やかな風が吹き抜ける。
成功なんて、たいしたことじゃないと思う。それよりも、大切なことがたくさんある。拍手は聞こえないかもしれないけど、燦々と太陽は輝いている。ままならないことをぎゅっと抱きしめていると、小さな奇跡で日々は満たされる。


 

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