2019/03/20

re-sonante

2019年4月1日(月)〜2019年5月6日(月)、The Terminal KYOTO にて開催される室礼展OfferingsⅤ〜Original Memoryに参加させていただきます。



写真は設営直後ですが、この後二点のアコウの木の木炭画の間に、漆工芸家、土井宏友さんの流木アンテナが設置されて完成になります。ぜひ実物をご覧ください。

このアコウの木は四国の室戸岬、海岸沿いの森に生えている木で、背後には若かりし弘法大師空海が修行したとされている御厨人窟(みくろど)があります。この洞窟から見える風景は空と海のみで、ここから「空海」の法名を得たとされています。 アコウは別名絞め殺しの木と言われていますが、愛し合うように岩に固くしがみつき、放射状に枝を伸ばす実物の姿には、災いから御厨人窟を守っている鬼神のような強さがあり、一方で空と海のエネルギーを全身に受け止めている大地のアンテナのような神々しい雰囲気もあります。

展示タイトルは「re-sonante」、resonanteとは反響する,鳴り響く、共鳴、共振という意味があります。

本展のテーマは「Original Memory」、Original Memoryとは本能的に秘めた特有の記憶。感情はその記憶を起源に生まれる。その内なる記憶を覚醒させる体験が得られる場作りを目論むというのが今回のテーマです。

では内なる記憶、Original Memoryとはなんでしょうか。

今回はじめて室礼展に参加させていただきましたが、会場の下見や、設営中、複数の作家さんとの作品と、響きあうことで生まれるエネルギー(これから生まれてくる可能性のような)を予感していました。この前兆が、やがて渦を巻き、場(銀河)を形成するのだと思います。個々の作品は違いますが、それらはなにか共通した記憶を起源として、反響し、共鳴し、共振して、成り立っているような気がします。その共通した記憶が、自然の一部である私たち人間の意識の古層に眠っている、未知なる宇宙の記憶(Original Memory)ではないでしょうか。作品とはその記憶のほんの一部の現れであり、手がかりだと思います。

様々な個性が集まり、響きあうこの空間は、普段眠っているその記憶を呼び覚ます装置であり、異界への扉になることでしょう。



👁👁

いくら拾っても空き缶が捨ててある場所がある。ポイ捨てするなという古い看板はあるのだけど、まったく効き目がない。試しに壁の苔を削って眼(👁)を書いたら、空き缶がグッと減った。こんなに効果があるとは思わなかった。誰もいないのに、じっと見られてる感じって、心の奥に伝わるのだろうな。見られて困ることなら、はじめからやらなければいいのに。誰もいなくても、天は見てる。

人の目を気にする大人は多いけど、自然の目を気にしてる大人は少ない。子どもの頃に見えていたものが、名前をつけられて、だんだん見えなくなっていく。不思議で溢れていた世界は、変わらずそこにあるのに。


名もない山

呼ばれたような気がして、名もない山に登った。ひたすら獣道を登ると、山頂付近に大きな檜の木が現れた。見上げていると、まるで吹き消したように、曇り空が晴れて、ああこの木が呼んだんだなぁとすぐにわかった。寂しかったのか、よく来てくれたと、喜んでいた。山の主が迎えてくれると、神秘が響き渡る。仮の姿だけど、神々が宿っている。山を下りたら、雨が降りだした。道が脆くて登りにくかったから、止めてくれてたのだとわかった。

水晶や壺を描いているとよくわかるけど、宇宙を内側と外側で繋いでいるのは、身体だと思う。大の大人が、呼ばれた気がして、突然名もない山に登ったり、河原に石を拾いに行く。外から見れば、狂人(変人)だろうと思う。たしかにはっきりした目的がないから、本人も大丈夫か?と思う。でもその徒労を、祝福してくれる光がある。自分を信じて、登ってみなければ、その光を、見ることはできない。たぶん人は生を終えるとき、この光に包まれるのだと思う。


無為自然

あまりにも天気がよかったので、そのへんをぶらぶら。誰もいない、名前もない野原や河原を、ただぼんやり歩いているだけなのに、宇宙の全てが今ここにあるような気がして、気力が漲っている。無為自然の道とはこのことか。

せっかくなので、屋根に干した布団の上で昼寝した。山に引っ越してすぐの頃も、こうやって屋根の上で寝転んで、いつまでも満天の星空を見上げてたっけ。『人と比べるな、孤独を怖れるな、私たちが守るから、ただ自分の信じる道を歩め』太陽や星々、森や川の流れから、いつも励まされてるような気がした。

眼に見えている世界が、全てではなかった。ウグイスの声で目覚めて、夜はフクロウの声を聞いた。美は霊界の門であり、音は内面への旅だった。内なる声に耳をすませば、眼に見えていない宇宙にも繋がった。人間はなにも知らない。そこから旅に出れば、すべては前兆であり、予感だった。