2017/04/29

生命の轍

薪を割っていたら、ナスカの地上絵のような模様が出現した。太陽のような、クモのような。珍しくはないけれど、直前まで剣山の聖なる岩を素描していたこともあって、古代の地層に触れたような不思議な気がした。

ナスカの地上絵って、鳥の目で描かれたものだと思う。人間って、ふたつの目がある。外側の目と、内側の目。内なる目は、鳥のように全体を見通したり、夢のように心を泳ぐことができる。木の中にいた虫は、その暗闇を内なる目で照らし、古代の夢を泳いでいたのだろう。だから地上絵とリンクした。

こんぴらさんで見た、若冲の花丸図には、個々の花や葉に、虫食いの穴やシミが描かれていた。内なる目で美を追及した若冲にとっては、夢を通すその穴が不可欠だった。画家が通したその細い糸は、太古の時間と今ここにある未来を織りなして、ただ綺麗なだけの花に、ありのままの生命を宿した。

虫に感情や意思はないのかもしれないけど、生命がある。シンプルに生きている虫の轍や、自然の織りなす芸術は、ときに人間の眠っていた感情を呼び起こす。内なる目は時間の宇宙を泳ぎ、生命の輝きに呼応している。外側の目と内側の目が重なる場所に、理由のない美しさや驚きがある。

 

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