2011/04/30

野良犬


よく行く海岸には、二匹の野良犬がいる。




手前がオスで昔からいた野良、奧にいるのが後から来たメスの野良。

二匹はいつも一緒にいる。とても仲がいい。どちらも野良犬とは思えない気品のある、高貴な顔立ちをしている。顔や体つきはメスの方が強そうなのだが、絶対的にオスの方が強い立場にあって、激しく噛み合うようなじゃれ合いをしても、最期は必ずオスがメスの首もとを噛んだ優位な状態で終結する。メスはいつもオスの後からついていくし、エサを与えてもオスが見ているとメスは食べようとしない。一匹になると、よく食べる。つねにオスに対して気を遣っているのだ。肝が据わっているのもオスの方で、人が来ても表情ひとつ変えず、まったく物怖じしない。一方メスの方はとても慎重で臆病。オスと自分が仲がよいのを何度も何度も確認して、最近やっと触れられる程度に慣れてくれた。見た目が逆なので、観察していると、まるで人間模様を見ているようで、とてもおもしろい。

この二匹は、人に媚びない。来るもの拒まず、去るもの追わず。人も海もただの景色なのだ。ただ其処にいる。とても自由で、気高く、美しい。潮風や砂浜がほんとうによく似合う。おそらく捨て犬だろうと思う。それでも人を恨まず、媚びを売らず、凛々と、逞しく生きている。見習うところが、たくさんある。此処に来れば二人に逢える。それだけで、海に行ってしまう。







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