そろそろ寒太郎がやって来るというのに、明王寺のしだれ桜を描きはじめてしまった。おそらく大楠が呼んだのだと思う。お互いを素描してよくわかったけど、宇佐八幡神社の大楠と明王寺のしだれ桜は、タンベラマン(気質)がよく似ている。花が咲くと一気に印象が変わるけど、今の時期の桜の古木を見ていると、それはよくわかる。樹々にはそれぞれの性格があり、気質がある。性格が違っていても、気質が似ていると、惹かれあう。
樹々は人間のようには動けないけど、想いは持っている。明王寺のしだれ桜は、春にだけ、大楠に手紙を送る。白い花弁に乗せた想いを、風が受けとり、運んでくれる。人間はその想いの破片を見ている。花は散らないと、その想いは届かない。
人間が目で見ている破片は、それだけでは想いを成さない。散らばった破片を、丹念に拾い集めているうちに、いつのまにか孤立していた断片が、見えない世界の全体に吸収されていく。その変化は音楽によく似ている。喜びに溢れていたり、どこかもの哀しい。
哀しいけれど救いはある。残酷だけど愛に溢れている。言葉のないはずの旋律に、話しかけられているように感じられるのはそのせいで、動物のようには動けない樹々や草木や花は、人間を通して、その想いを託している。虫や動物が無自覚に種を運ぶように、人間は秘密の手紙を託された、風のようなものなのかもしれない。
雨上がりの明王寺、葉が落ち切ったしだれ桜の古木は、禍々しいほどの静寂に包まれている。横に伸びすぎて、棒で支えられた両手は、磔にされたキリストのような雰囲気がある。なんとなくひいたおみくじには「波のおと 嵐のおとも しずまりて 日かげ のどけき 大海の原」と書かれている。帰り道の、宇佐八幡神社の大楠の横で、小さな子猫が歩いてきた。とぼとぼ歩くトラ猫は、後ろから来た軽トラを通せんぼしていて、困ったなあという顔のおじさんと目があって、お互いに笑った。子猫はこちらを見て、ニャッと吠えた。ときどき見かけるあの猫は、きっとなにかの使者だろう。
いろいろな大樹を見てまわったけど、桜の妖気は抜きんでて強い。古の歌人や画家が、のめりこんでしまう気持ちは、よくわかる。何百年と生きてきた大樹のほとんどは、話しかけてもはぐらかされるというのか、人間なんて眼中にないよ、という飄々としたところがあるのだけど、桜は絡みつくというのか、後ろ髪を引かれてしまう。
明王寺はイーゼルを立てるような環境ではないので、あらかじめ取っていた素描を頼りにして、桜の絵を描いている。ときどき現場に印象を確かめに行くと、枯木には満開の花が咲いている(ように見える)。見えているから、わからなくなることがあるように、見えないからこそ、はっきりしてくることがある。
美しいものは、誘惑する。暗くて深くて、底のない河に。表面に見えている、社会とか経済とか、そういう流れとは別に、時間を超えて存在している、大きくて深い河がある。暗すぎて見えないその河に、ひとひらの花びらが流れている。枯木は厳しい冬を迎えて、夢を見ている。その夢には、永遠の花が咲いている。
2016/11/28
2016/09/30
彼岸花
彼岸花が満開になった。うちの周りはなぜだか白
ある日、誰かに根こそぎ持っていかれたら
ある日、誰かに根こそぎ持っていかれたら
2016/09/03
霊性と礼節
「人間の進歩にとって特別重要な
暑い日は頭がぼぉっとして制作が
どうやらコオロギが家に迷いこん
ある日、いつもの瀧の入り口に、東
場所には雰囲気というものがあり
よくもまあこんな美しい場所で、
頭に血が昇っているから、腹を立
地盤が脆いこと、谷が深いこと、
山を下りながら、そこはかとなく
暑い日は頭がぼぉっとして制作が
どうやらコオロギが家に迷いこん
ある日、いつもの瀧の入り口に、東
場所には雰囲気というものがあり
よくもまあこんな美しい場所で、
頭に血が昇っているから、腹を立
地盤が脆いこと、谷が深いこと、
山を下りながら、そこはかとなく
2016/07/09
土砂崩れ
陽射しが強かったので瀧に向かっ
身の危険を感じて、慌てないで山
山を下りるとまた晴れてきた。陽
今こうやって生きているのは、宇
身の危険を感じて、慌てないで山
山を下りるとまた晴れてきた。陽
今こうやって生きているのは、宇
土砂崩れがトラウマになってしまったの
そういう気がするというだけなの
瀧壺が急に薄暗くなる。浮遊する
神気と霊気(inspirati
人間(大人)は安全な場所にさえ
道路に獣が倒れていた。草むらに
人間も自然の一部なのだから、畏
そういう気がするというだけなの
瀧壺が急に薄暗くなる。浮遊する
神気と霊気(inspirati
人間(大人)は安全な場所にさえ
道路に獣が倒れていた。草むらに
人間も自然の一部なのだから、畏
2016/06/30
2016/06/01
龍の門
『お前は無限を押し戻すことさえ
ポール・ヴ
瀧壺
人間は人間のフレームでしか物事
瀧への細い山道で、二日連続で蛇
平日はほとんど人が来ない山だけ
高い岩場に囲まれている瀧壺には
もののあはれを知ると、頭で考え
2016/05/17
精霊の森③
森に運ぶことができる最大のサイ
季節や時間によって、風景は移り
アントニオ・ロペス・ガルシアは
最近、仲よくなった地元の人に、
頂上の小さな祠は、到達点ではなく、ほん
その話を聞いてから、すこし森に
季節や時間によって、風景は移り
アントニオ・ロペス・ガルシアは
最近、仲よくなった地元の人に、
頂上の小さな祠は、到達点ではなく、ほん
その話を聞いてから、すこし森に
2016/05/04
剣の夢
不思議な夢を見た。剣山の山頂の
最近は導かれるように図書館で手
遅読者なので、貸し出し期間を延
精霊は大地に根付いている。彼ら
アボリジニがなにより大切にして
なぜなら、怒りが怒りによって癒
最近は導かれるように図書館で手
遅読者なので、貸し出し期間を延
精霊は大地に根付いている。彼ら
アボリジニがなにより大切にして
なぜなら、怒りが怒りによって癒
P.S
徳島城公園にある竜王さんのクス
いつか見たあの夢が、現実にある
徳島城公園にある竜王さんのクス
いつか見たあの夢が、現実にある
2016/04/17
緑の季節
春の嵐が過ぎ去って、夏のような
アボリジニの画家、エミリー・カ
2008年に国立新美術館で、ウ
作品はプリミティブ過ぎて、正直
そういうことはよくある。そのと
彼女の絵は外に向いていない。内
彼女は自ら望んで画家になったわ
最晩年のモネのような「大地の創
写真 Emily Kame Kngwarreye「大地の創
参考 エミリー・ウングワレー展図録
アボリジニの画家、エミリー・カ
2008年に国立新美術館で、ウ
作品はプリミティブ過ぎて、正直
そういうことはよくある。そのと
彼女の絵は外に向いていない。内
彼女は自ら望んで画家になったわ
最晩年のモネのような「大地の創
写真 Emily Kame Kngwarreye「大地の創
参考 エミリー・ウングワレー展図録
2016/04/01
ドガ・レイン・デッサン
朝から浮世絵のような雨。春雨だから、気分はいい。陽光は
夏の夜にヘッドライトをつけて走
ドガの絵を見ていると、シューベ
ドガは目に病があって、直射日光
降り続く雨のような、憂鬱だけど
なにかを諦めたはずのに、なにか
「ドガは常に自分の孤独を感じ、
「なにも知らないうちは、絵を描
彼が抱えていた孤独の色は、僕に
「本質的な芸術家というものは、
「作品が作者を修正する」
ヴァレリーの言葉に寄り添うなら
「鉛筆を手にせずにして或る物を
「我々は、その形をいままで知ら
数えきれない雨粒が、川の音に合
参考「ドガ・ダンス・デッサン」
写真 Edgar Degas (1834–1917) Little Dancer Aged Fourteen,
夏の夜にヘッドライトをつけて走
ドガの絵を見ていると、シューベ
ドガは目に病があって、直射日光
降り続く雨のような、憂鬱だけど
なにかを諦めたはずのに、なにか
「ドガは常に自分の孤独を感じ、
「なにも知らないうちは、絵を描
彼が抱えていた孤独の色は、僕に
「本質的な芸術家というものは、
「作品が作者を修正する」
ヴァレリーの言葉に寄り添うなら
「鉛筆を手にせずにして或る物を
「我々は、その形をいままで知ら
数えきれない雨粒が、川の音に合
参考「ドガ・ダンス・デッサン」
写真 Edgar Degas (1834–1917) Little Dancer Aged Fourteen,
2016/03/27
彼岸に咲く花
梅が散り、枝垂れ桜が咲くころに
咲きはじめの桜の樹は、あけぼの
たまたま桜と呼ばれているなにか
世阿弥の能楽、西行桜において「
枝垂れ桜の老木の前で、記念撮影
咲きはじめの桜の樹は、あけぼの
たまたま桜と呼ばれているなにか
世阿弥の能楽、西行桜において「
枝垂れ桜の老木の前で、記念撮影
腑に落ちる
カムイが制作中に、足下にふっと
腑に落ちるというのは、からだの
風に舞う花びらを数えるように、
腑に落ちるというのは、からだの
風に舞う花びらを数えるように、
2016/03/18
鍬を持つ男
雨を含んで土が柔らかいうちに、
土を耕しているときは、いつも野
その未来予想図は、思ったとおり
求めていた未来が、手に入ったと
Jean-François Millet 「鍬を持つ男」 1860 - 1862 Oil on canvas
土を耕しているときは、いつも野
その未来予想図は、思ったとおり
求めていた未来が、手に入ったと
Jean-François Millet 「鍬を持つ男」 1860 - 1862 Oil on canvas
2016/03/15
ゴッホの手紙
数日前に届いた、ゴッホの全作品
共時性(シンクロニティ)が起こ
インスピレーションとは、対象(
人工衛星の破片が、火の鳥のよう
インスピレーションとは、対象(
人工衛星の破片が、火の鳥のよう
2016/02/26
シンビジウム
シンビジウムという花をいただい
野生の花や蕾は描けるんだけど、
目の届く場所に、お気に入りの骨
呼吸のように、していることを忘
精霊の森は、たしかに自分の中に
あの森は、心のなかにある。そう
目の届く場所に、お気に入りの骨
呼吸のように、していることを忘
精霊の森は、たしかに自分の中に
あの森は、心のなかにある。そう
束の花は、いかにも豪華だけど、
一輪を、朝の光の窓辺に、もう一
花も人間も、集団より個の方が、
花(自然)が表現していることに
なぜこんな形をしているのだろう
一輪を、朝の光の窓辺に、もう一
花も人間も、集団より個の方が、
花(自然)が表現していることに
なぜこんな形をしているのだろう
2016/02/06
辻風
呼ばれたような気がして、
今朝、森のなかで、ふとゴッホを
2016/01/24
冬梅
春になったら描こうと思っていた
梅の前にイーゼルと椅子を置
カムイはすぐに三つの穴を掘り起
この梅の樹を植えたおばあさんは
タンポポが風に運ばれるように、
2016/01/15
夢
奇妙な夢をよく見る。知らない土地なのに、どこか懐かしい感じが
寝ているときの自分は、時間や空
山や森に入ると、独りなのに、豊
手付かずの山を登るとき、頭より
間伐をしているので、後ろめたく
眠りにつくように、世界に体を貸
夢を見た。戦国時代、敵対してい
しばらくは二つの現実が重なって
時計を分解しても時間が見つから
相対性理論に基づくと、自分の時
死んだらどこに行くかを考えるよ
しばらくは二つの現実が重なって
時計を分解しても時間が見つから
相対性理論に基づくと、自分の時
死んだらどこに行くかを考えるよ
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